雪崩救助犬トレーニング

目標
訓練を始めるにあたって
導入訓練
初級訓練
中級訓練
上級訓練
アラート(告知動作)
発見
ごほうび

     

目標

 
雪崩救助犬チームの目標は、雪崩による遭難者の埋没位置を素早く特定することにあります。雪崩事故において、素早い対応、しっかりとした捜索、そして安全はすべて重要な要素になります。雪崩事故現場において、安全に効率良く捜索をするために、犬は様々なスキルを身につけなければなりません。








訓練を始めるにあたって

 
雪崩救助犬としての適性を持つ犬を選ぶことが重要であるにもかかわらず、この点は多くの場合、見過ごされがちになっているので、気をつけなければなりません。雪崩救助犬になるためには、雪崩救助犬としての適性が求められますので、どんな犬でもなれるわけではないのです。世界的に見ても、警察犬や盲導犬などでよく使われている、ジャーマンシェパードやラブラドールレトリーバーといった犬種が多く使われていることは事実ですが、犬種よりも個体の素質や性格が大切になってきます。つまり、雪崩救助犬に適した素質や性格を備え、適切な訓練を受けることができれば、犬種は問わないということです。(雑種犬で活躍している雪崩救助犬もいます)

 では、雪崩救助犬としての適性とはどんなことがあげられるのでしょうか?性格的な適性としては「人が大好き」「遊びが大好き」「好奇心や集中力が旺盛で探索するのが好き」といったことがあげられます。人や犬、他の動物に対して攻撃性があってはいけません。他人や音に過度にシャイだったり、新しい環境になかなか慣れないような神経質な犬は雪崩救助犬としては向いていません。適度な自立心を持ち、初めての場所でも自分から進んで行動できる積極的な犬が向いているといえます。そしてもちろん何よりもまず、健康であることがあげられます。最近大型犬によく見られる、股関節、肘関節、膝関節、椎間板などに疾患を抱えている犬は厳しい環境下での作業に耐えることが出来ないため雪崩救助犬にはなれません。また、極端に毛が薄い犬種は極寒の環境に対応しきれず、雪崩捜索作業には向いていません。

 雪崩救助犬とハンドラーが一人前になるまでには、何シーズンにも渡り繰り返し訓練を積まなければなりません。犬とハンドラーの関係はそのペアの成功を左右します。人を捜すこと、またハンドラーと一緒に仕事をすることに意欲的でない犬を訓練することは不可能です。ですから、まず犬とハンドラーとの信頼関係構築から始めます。これが今後の犬の犬生そして訓練を大きく左右します。この信頼関係なくして救助犬の育成はありえません。

 雪崩救助犬訓練の基本中の基本は服従訓練です。スワレ、フセ、マテ、コイ、モッテコイ、ヤスメなど、犬はハンドラーの命令に従い、ハンドラーは犬の行動を観察し、掌握(コントロール)する訓練です。この服従訓練ができていなければ、どんな捜索訓練にも進むことができません。

 そして、信頼関係構築&服従訓練と平行して行われるのが、幼犬期からの社会化です。救助犬は見ず知らずの遭難者を捜すのですから、犬にとって人間が安心できる存在であることをまず教えなければなりません。多くの人達に犬と触れ合い、遊んでもらい、人が大好きな犬を育てます。同時に犬を様々な環境に慣らしていきます。スキー場、スキーヤー、スノーボーダー、雪、乗物、などなど。どんな環境にも物怖じすることなく行動できる柔軟な犬にしていきます。
 以上“信頼関係構築”“服従訓練”“社会化”が出来てから、初めて雪崩捜索犬としての訓練が始まります。








導入訓練

 まず最初は雪に慣れさせましょう。雪の上での体験が犬にとって楽しいこと、嬉しいことになるよう、心掛けます。(決して嫌な印象を与えてはいけません。)
 雪に慣れたら、ゲーム感覚を取り入れて、人を捜させることは楽しいものであることを教えていきます。

<ランナウェイゲーム>(*)

  1. ヘルパー(*)に犬をおさえていてもらい、ハンドラーは犬の名前を呼んだり、おもちゃやフードなどを大袈裟に見せびらかしながら、犬のもとから走り去り、ほんの数メートル先の予め掘っておいた浅い雪のくぼみに飛び込みます。ハンドラーの姿は犬に見えるようにしておきます。
  2. ハンドラーが飛び込んだ瞬間にヘルパーは犬を放します。
  3. 犬とハンドラーの絆がしっかりしていて、犬がハンドラーの行動に注意を払っているのであれば、すぐに走ってきて見つけることができます。
  4. ハンドラーは犬が自分のもとにやってきたらすぐに思いっきり(大袈裟なくらい!)褒めてあげましょう。この時、褒めると同時にごほうびを与えます。ごほうびは今後訓練を続けていく際、犬にとっての大切なモチベーションの一つになります。
  5. ハンドラーのランナウェイができるようになったら、今度はハンドラーとヘルパーが一緒にランナウェイを同じ要領で行います。(この時は第2のヘルパーに犬をおさえていてもらいます。)そして最後にヘルパーだけのランナウェイを行います。









初級訓練

 雪上でのランナウェイゲームができるようになったら、次は雪洞を掘ります。雪洞は竪穴を掘ってから、人と犬が入るに充分な大きさの横穴を掘ります(写真A)。雪上でのランナウェイゲームと同じ要領で、再びハンドラーが犬の名前を呼んだり、おもちゃやフードなどを見せびらかしながら、犬のもとから走り去り、雪洞に飛び込みます。ヘルパーはハンドラーが雪洞に入った瞬間に犬を放します。導入訓練がきちんとできていれば、犬は真っ直ぐにハンドラーの元に走っていくでしょう。この時注意をしなければならないのは、犬によっては雪洞に入ることを怖がることもあるということです。決して無理強いせず、雪洞の中に誘導し、犬が自主的に中に入ってきたら、思いっきり褒めて、雪洞の中で十分に遊んであげます。ハンドラーのランナウェイができるようになったら、次は同じ要領でハンドラーとヘルパーが一緒にランナウェイをし、そして最後にヘルパー一人でランナウェイをやります。

 ヘルパーによる雪洞のランナウェイが問題なくできるようになったら、再びハンドラーが隠れ役に戻ります。今度は、雪洞に入った後、2番目のヘルパーに入口を薄い雪のブロックで簡単の被ってもらいます(写真B)。この時、密閉するのではなく、隙間がたくさんできるようにブロックを積んでいきます。入口を被ったら、ハンドラーは雪洞の中から犬の名前を呼びます。犬はハンドラーの声が充分に聞こえる距離でおさえていてもらいます。犬がハンドラーの方へ行こうとした瞬間にヘルパーは犬を放します。犬は入口がふさがれているので、最初は多少とまどうかもしれませんが、すぐに前足で雪のブロックを崩して中に入ってきます(写真C&D)。この段階では、犬が前足で一掻きしただけですぐに崩れるブロックにしておくことが大切です。犬が中に入ってきたら、ごほうびを与え、思いっきり褒めてあげます。ハンドラーでうまくできるようになったら、次はハンドラーとヘルパー、そして最後にヘルパーだけで隠れ役をします。


 

  

 以上のような訓練を繰り返し、犬が“雪の中にも人がいる”という認識をつけてきたら、雪洞のランナウェイにバリエーションを加えていきます。
  ヘルパーが隠れてから犬を放すまでの時間を徐々に長くする。
  雪のブロックを少しずつ厚くする。
  雪のブロックの隙間を少しずつ埋めていく。
  ブロックの上から雪をかぶせていく。
  最終的には雪洞を完全に埋める。









中級訓練

 “雪の下に隠れている人を捜す”という充分な意識を犬が持ったら(犬が雪崩捜索ゲームのルールを完全に理解したら)、今度は本格的な捜索訓練に移っていきます。
 雪洞にヘルパーが入り、完全に埋めます。最初は、埋没深を浅くし、臭いが雪面に上がりやすいように埋め、捜索範囲を狭くします。この状態で、犬が問題なくヘルパーの埋没場所を特定できるようになったら、埋没深、臭いの上がりやすさ、捜索範囲、この3つの要素のうち、いずれか一つだけを難しくしていきます(埋没深を深く、臭いが上がりにくく、捜索範囲を広く)。それができるようになったら、3つの要素のうちの2つまでを難しくしていきます。それもクリアできたら、最終的に3つの要素すべてを難しくした課題を設定します。
 中級訓練の途中で、時々“ブラインド捜索”を組み入れていきます。ブラインド捜索とは、ハンドラーと犬にはヘルパーの埋没場所を知らせずに行う捜索訓練です。このブラインド捜索を取り入れることにより、ハンドラーは「犬の反応を読む」という大切な訓練をすることができるのです。犬の捜索訓練と同じくらい重要な訓練が、ハンドラーの犬の反応を読む訓練であるにもかかわらず、見過ごされやすいので気をつけなければなりません。








上級訓練

 犬もハンドラーも訓練を重ねてきたところで、雪崩現場における混乱を真似た環境を訓練の中に取り入れていきます。実際の雪崩捜索現場では、多数の人が現場を歩き回っていることでしょう。プローブ班がプロービングしていたり、スノーモービルが走りまわっていたり、人が叫んでいたり、雪崩コントロールの爆発音が聞こえたり、現場中に物が散乱していたりすることが考えられます。そのような環境に惑わされることなく、犬とハンドラーのペアは迅速に自信を持って捜索しなければなりません。そのためには、実際の現場で犬が遭遇するであろう、思いつく限りのありとあらゆることを犬に経験させ、その状況下での捜索訓練を重ねます。実際の緊張や混乱を真似するのは難しいかもしれませんが、できるだけ現場の状況を再現する努力をすべきです。犬は経験から学習する動物です。一つ一つの経験の積み重ねが現場で大きくものを言います。
 
 状況の再現だけではなく、食べ物・燃料・人間や犬の尿など、犬が好む好まないにかかわらず、様々な障害・誘惑物や臭いを訓練に取り入れていきます。このような障害・誘惑物すべては、現場で遭遇しえるものであり、また過去の捜索記録にも書かれています。犬と同じくハンドラーも障害・誘惑物に気を取られやすいことを覚えておきましょう。

 また、2頭同時に捜索させる訓練もしましょう。犬同士がお互いを気にすることなく捜索に集中できるように普段からの訓練が必要です。











アラート(告知動作)

 犬とハンドラーのペアが埋没者を発見するには、「臭いの源を見つけた!」という犬からのはっきりとした告知動作が必要です。この告知動作をアラートと呼びます。掘る、吠える、座る、伏せるなど、様々なアラートがありますが、「ここから人間の臭いがしていますよ!」という犬からの明確な意思表示でなければなりません。雪崩捜索の場合、“掘る”アラートが一般的です。意欲的な犬は、埋没者から立ち上って雪面に出てくる臭いに向かって激しく雪を掘り始めるので、アラートがとても分かりやすいのです。

 
きちんと犬のアラートを"読む"ために、ハンドラーは雪と風の状態(つまり臭いの状態)、雪崩が起こった地形、デブリを取り巻く環境、犬が気にするかもしれない障害物や誘惑物の存在を把握しておかなければなりません。また、ハンドラーは犬のその日の体調や捜索能力についても認識しておかなければなりません。

 デブリ内の雪質の変化にも注意を払うべきです。雪質によっては臭いが発散する場所や、犬がアラートする場所に影響を与えます。犬は臭いを捜しているので、アラートした場所と実際の埋没地点とは若干の誤差が出る場合があることを覚えておかなければなりません。









発見

 犬が一生懸命に掘り始め、ハンドラーがそれをアラートであると認たら、ハンドラーは犬が掘るのを一緒に手伝います。これには二つの理由があります。一つは、犬は自分の身体の4分の3程の深さしか掘ることができません。2つ目は、通常の雪であれば掘りやすいのですが、デブリ跡はそうはいきません。雪崩の跡の雪は非常に固くなります。まるでコンクリートのようであると言う人もいるほどです。雪は動いている間は液体のようですが、いったん動きが停止すると、ちょうどコンクリートが養生するかのように、固くしまっていくからです。

 雪崩現場と同様に、訓練においても、ハンドラーはスコップとプローブを持たなければなりません。プローブで犬のアラートの場所を確認し、埋没箇所をピンポイントします。その後、スコップで埋没者を掘り出します。プローブとスコップを使う際には、埋没者役に怪我をさせないように細心の注意が必要です。

 雪崩現場では、犬が雪面から出る強い臭いに強く反応した場合、プローブ隊とスコップ隊を呼ぶことになります。プローブ隊が犬のアラートした場所に到着した時点で、犬とハンドラーのペアにはいくつかの選択肢があります。犬とハンドラーはその場を離れ、さらに他の埋没者の捜索を続けます。あるいは他のペアが同時に捜索を行っていた場合その犬の反応箇所の確認作業をします。または、現場で要員が足りない場合にはハンドラーは掘出しと搬出に加わらなければならない時もあるでしょう。知っておいていただきたいのは、雪崩救助犬チームはほとんどの場合、生存者救出というよりも、遺体捜索に関わることになるであろうということです。








ごほうび

 雪崩捜索訓練を行う犬達にとって様々なものがごほうびとなります。おもちゃを使ったハンドラーやヘルパーとの遊び、たとえばフリスビーや紐付きボール、なかには丸めた手袋や靴下がおもちゃになる犬もいます。ドッグフード、ソーセージやチーズなど、食べ物がごほうびとなる犬もいます。その他、ハンドラーやヘルパーからのほめ言葉や、やさしい愛撫も犬達にとってはごほうびになります。訓練の観点から言うと、充分なごほうびを用いた訓練方法が有効です。ハンドラーの大切な役割の一つに、犬がもっとも興味を引かれる魅力的なごほうびを探し、それを早い段階で訓練に取り入れていくことがあります。
(写真:ごほうびの例 紐付き野球ボール、ゴムボール、ホース、ドッグフード、ビスケット、ソーセージ、チーズなど)







                
























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